ようやく読み終わりました。かなりヘビーな本です。以前本屋で立ち読みしたのですがいつか読もうと思ってそれきりになっていたものです。
内容は、歴代のオーケストラ指揮者の生い立ち、履歴、業績から個人的なゴシップに至るまで、事細かに記述してありまして、原題は”The Maestro Myth”巨匠の虚像、とかいう意味になります。
最終的に筆者の言いたい事は第16章に書いてありますが、クラシック界には超強力な演奏家のエージェント組織があり、そのエージェントがレコード会社やら放送局を支配しており、巨大なコングロマリット化しているという事です。この体勢は20世紀のはじめくらいから始まり、2度の戦後のドサクサと欧米の近代化(=商業化)によってムキもなく強力になって行き、それがクラシック音楽の権威を高め、かつ腐らせたという事を実際の取材をもって証明しています。
これは今年11月15日付の日経新聞の 中途半端な記事 に関連してはいるのですが、私たちが一般に馴染んでしまったクラシック音楽(正確にはヨーロッパ音楽)の「権威」について、実は戦後になって生まれたもので、それまでは確かに名人はいたけれど、ここまで強力な権威として捉えられてはいかなったという事を教えてくれます。
商業的に利益を生む為には多数のフツーの音楽家がいるよりも少数の天才*だけ*その権威をメディアを通して増幅して売り込み、独占販売する事で利益を独り占め出来るわけです。実際にそういう体勢をオーケストラと指揮者という関連で、アメリカのエージェントとヘルベルト・フォン・カラヤンが作っていった、というのがクラシック界の真実です。要は一般市民は単に騙されてしまっただけだと。
しかしその結果、指揮者と音楽総監督の様な役職の報酬ばかり数十倍に高騰し、それまで補助金無しで経営出来たヨーロッパ各都市の歴代オーケストラは維持するために国からの援助を受けなければ成り立たなくなり、才能のある若手は活動の場を失って育たなくなり、そしてステータスを独占したままマエストロたちが亡くなって行った今、オーケストラ、若手演奏家・指揮者、特にオペラの世界はどうしようもなく悲惨な事になってしまっていると、いう事です。
ここで書かれている出来事のミニチュア版が今のJazzの世界だろうと思っていますが、まあその辺はまた後ほど。
他にも関連書籍あります。筆者の検索リンクー>レブレヒト
文責:ためすけ後藤
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