もう一冊、ジョセフィン・ベイカーの伝記。先の一冊は主にBakerのアーティストとしての視点からヨーロッパの文化的側面を記述していましたが。こちらはベイカーの活動を「闘志」の側面から捉えています。実際にダンサーとして活動していた時期よりも政治的な活動をしていた時期が長いので「闘う」女性として見る方が正しいのでしょう。
フランスでシンガー/ダンサーとして活動しながらレジスタンス活動を続けていた事や、戦後のアメリカ公民権運動に先立って差別に抵抗した話は大変興味深いです。第5章−6章の1951年の白人専用クラブでの出来事と当時人気コラムニストとの対立、それが原因でFBIにマークされて国外活動を逐一監視された事が皮肉にもベイカーの重要な活動を今日に記録として残す事になった等。この辺りはJazz屋もよくよく読んでおくべきです。アメリカの戦後ジャーナリズムがかなり恣意的で偽善的である点、Bopの興勢の時期、ジョセフィンが個人的な理由でアメリカのから著名コラムニストから攻撃された時期が変に重なるのはあやしい、という感じがします。その後(ゴタゴタと裏話もありますが)公民権運動の時代のワシントン大行進に参加もしています。
ジョセフィン自身はフランス国籍でアメリカを離れてアメリカ内の差別を批判したのですが特定の政治活動の為に行動したのではなくて個人の心情として差別を批判していたのが特徴で、それが彼女の強みでもあり弱点でもあったと思われます。気まぐれな面も多々ありショービジネスの世界でも本当にうまく行った時期は短いのですが12人の養子を育てた「闘う母親」という位置づけでは偉大な人だと考えられます。
加えてこの著者の荒このみさんもスゴい人みたい。著作沢山あるし、アメリカ文化にはかなり詳しそう。他の著作も読んでみたいです。ジョセフィンベイカー
文責:ためすけ後藤
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