なかなかに難しい本です。160ページ程度でそんなに長い著作でもないのですが、文体が難しく表現が抽象的で語彙の意味するところがいまいち定義されずに話が進むという文章で、さらに前提に1920年代「ハーレムルネッサンス」と呼ばれた時代の詩人、小説家等の作品をベースにしているのでそれら作品を知らないとなおの事分からないという書籍。著者はヒューストン・A・ベイカー・ジュニア、1943年生、アメリカの大学の英文科教授。もちろんAfrican-Americanです。
この著者が結論として言わんとする事は、1920年代の一時期、ハーレムルネッサンスと呼ばれた黒人文化が興勢であった時期を、現代では「ただの失敗」であると一般的に考えられているけれど、その視点を間違いとしてこの時代の黒人の活動を肯定的に捉え、次の時代へ続く「黒人的モダニズム」の発露の時代であると結論付けています。ただ、その証明/論証の過程に出て来る当時の著作などが、自分は全く知らないし、文章表現も非常に難解なのでよく分からない、、、という事態になってしまいました。
取り上げられている作家達は、アレン・ロック、ブッカー・T・ワシントン、W・E・B・デュボイス、チャールズ・チェスナット、スターリング・ブラウン,etc. 実は全然知らないの・・・
この中で特筆したいのは、オビにもちょっとだけ書いてありますが著者のBluesに対する評価です。スターリング・ブラウンという黒人詩人が1920年代に書いた詩で、"Ma Rainay"を讃えた作品がありそれを紹介しています。ベイカーはこの1920年代のBluesとして特に"Ma Rainey"から始まるBluesシンガー"Bessie Smith","Mamie Smith","Ida Cox","Albert Hunter","Sleepy John Estes","Robert Johnson"、その他「ニューオリンズデルタ地域周辺の草の根黒人Blues歌手たち」がアメリカから世界全土へ広まって行った事をアングロサクソンの「モダニズム」とは異なった本当の意味の「黒人的モダニズム」であると述べています。「Ma Raineyを聴け」とはっきり書いています。
とても興味深いと思われるのは、OldJazz/Blues聴いていれば本当にその時代にRootsがある、とすごくよく分かるのですが、この現代に黒人の大学教授があえてこういう本を出して言わねばならなかったという事は、逆に未だにこの時代の音楽の価値が認識されずに忘れ去られているという証拠を表しています。当たり前の事が忘れ去られているからダメなのですね。考えればそんなの当たり前なのに。やはり古いBluesはもっと聴かれねばなりません。Jazzを黒人音楽だと考えているなら尚更であります。検索リンク→ハーレムルネッサンス
文責:ためすけ後藤
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