勝手にBuescher研究
記::2005/9/5
ここではVintage楽器で有名なアメリカのBuescherのSaxphoneについて書いて行きたいと思います。オールドな楽器とオールドな音楽について勝手にうんちくします。
なお記事内容は随時付加・変更されます。日付にご注意下さい(w
歴史:
Buescherは1800年代の終わりにアメリカはインディアナ州Elkhartで、同じくElkhartにある楽器メーカCONNの工場長だった
Buescherさんが独立して始められました。(読み方はビッシャー、だそうです)BandInstrumetのメーカとして、特にSaxのトップブランドとして沢山の楽器を製造して来ました。しかし第2次世界大戦後の音楽及びバンド業界の推移に伴い業績は低迷、1963年に新興のセルマーによって会社は買い取られます。 楽器としての特長は良く鳴る楽器で音程も正確であると当時にCute,
Sweetという言葉で表現される音色が特長となっています。よく引き合いに出されるのがDuke
Ellington楽団の楽器が全部Buescher製であった事、Jonny
Hodgesがこの楽器を使い独自の音楽をやっていた事が知られています。
何故Buescherに惹かれるかというと、この音色にあるのです。
OldなJazzのSaxの音が何とも優しい独自の音色を持っているのを再現したかったのですが、その様な音をモダンのSelmerを使って奏法やマウスピース/リードで出そうとしても元々無理があります。というか、本来無理があったのですが、違う楽器の音世界があるなど長らく気が付かなかった、知らなかったという事です。
日本では楽器商の長年の戦略でSelmer以外の楽器はこの世に存在しないというマーケティングが浸透しておりSelmer以外のアメリカ製の良い楽器がある事は一般には知られていませんでした。早い話が騙されていた様な感じですが、時代の流れとして日本に音楽がマトモに普及し始めたのが戦後で、その時期すでにアメリカでは音楽の傾向が一方向に向いてしまっており、それにSelmerが乗じて、それを遅れた日本が真似をして追いかけて来たというのが実情ですので、その辺りの事情で一般に誤った思い込みが染み付いてしまったのではないかと思われます。
楽器のラインナップとモデル名の概要:
初期ー1931年くらいまで TrueToneシリーズ
1932ー1934年 NewAristocratシリーズ
1935ー1945年 Aristocratシリーズ
1946ー1960年 400シリーズ
1960ー1963年 もろもろ
TrueToneシリーズについて:
一番初期のシリーズに当たります"TruneTone"シリーズは大きく2つの時期に分けられる様です。おおよそ
1925年までと、1926年以降です。楽器のキーメカニズムに違いがあり特に1926年以降の製番で19万番台あたりの楽器からフロントFが付いて来る点が大きく異なっている様です。(実は製番とモデルで食い違いがあります。詳細は後程)
この時代1920年代は実はBuescherに限らず第一期のSax全盛時代でもありました。アメリカは景気も良く栄えに栄えた時代でもあります。この頃に作られたSaxはAlto,Tenor,Soprano,Bartoneなどの一般的なものに加えてBassSax,コントラBass、ソプラニーノ、C-Melody-tenor、C-Sopranoなどなどなど、非常にバラエティーに富んでいます。また同じ楽器でもベアブラス、ラッカー仕上げ、銀メッキ、金メッキなど加工の違いによるラインナップもあり、まさにに黄金時代でありました。
これらのSaxにすべてシリアルが振られているのでそれだけを見るととんでもない数の楽器が製造された様にも見えこの時代の楽器に年代としての価値が無い様な見解が見受けられますが、それは間違いでありましょう。色々な意味で本当に「バラエティーに富んだ」時代です。この点は重々注目すべき点です。
楽器の構造しては同時代のCONN等と同じく B,Bbキーが左右に分かれて配置されているタイプです。また、Eフォークキーという右手Eに連動する小さなキー(音程補正用か)がついているのが特長です。
Buescher独自の仕様として、スナップインレゾネータという、パッドをホック式に固定して同時にレゾネネータも兼ねてしまうというキーカップ構造があります。この為使用できるパッドは中央に穴が開いて金属で裏打ちされた専用のパッドになります。
欠点として左手小指G#キーがとっても使いづらい。。。。同時代の楽器は概してG#は使いづらいのですが、Buescherについてはメカニズム上ダントツに使いづらいと思います。
音は、大変良く鳴ります。1930年のラッカータイプが特に良く鳴りました。SilverPlateは締まった感じの音ですが、艶があります。
GoldPlatedは音のキレが良くフレーズへの反応が速いです。艶はSilverの方があるかなという感触でした。年代製品によってネックのタイプが異なりネックによっての音の違いもあり、いろいろ試している処です。
NewAristocratシリーズ:
1929年のアメリカ大恐慌のあおりで各方面、非常に経済的打撃を受けました。楽器メーカも同じで何だかの構造変化を求められます。恐慌の真最中か納まってからか分かりませんが、TrueToneの後継として出たのがNewAristocratシリーズです。楽器としてキーメカニズム(左手テーブルキーあたり?)に若干の変更があった様ですが他はTrueToneシリーズと変わりません。ベルキーも左右でEフォークキーも付いていました。作られたのはAltoとTenorのみの、表面仕上げもラッカーとSilverPlatedのみでGoldPlated
は無かった様です。
Soprano等他のラインナップは全部止められてしまった模様です。製造期間が短いので数は出ておりません。実物は見た事がないのでなんとも良く分かりません。。。。
年代として先のTrueToneシリーズと恐慌の時期がカブってないか?と疑問はあります。これは、(1)もともと大恐慌が突然起こった。(2)その時点でメーカーには製作中の楽器もバックオーダも在庫、返品も多数あったはず。。。。楽器の売れ行きはいきなり落ちたでしょうが、それらの残りが完全に掃けるのに2、3年要したとしても不思議はないかと思います。それが製品と年代が変にずれている理由ではないかと考えています。
Aristocratシリーズ I
Newが取れたのが新しいAristocratシリーズです。かなり構造が変わりまして、ベルキーが向かって右側に統一、Eフォークキーが無くなった事、G#キーに改良が加えられてほぼモダンキーアクションに近くなった事、スプリングがスクリュー式のノートンスプリングになった、等の変化があります。音は、、、ラッカーのAlto一台しか持ってないし他を吹いた事がないので何とも言えないのですがTuneToneより鳴りはわるいような、音は柔らかいです。sweetというよりソフトという感じでしょうか。個体差がある様な気がします。
いろいろ調べたのですが、どうも写真として残っているHodgesが使っている楽器はこの時代のAristocratシリーズ以降のものばかりで、良く知られているHodgesの音はこのあたりのモデルによるものではないかと踏んでいます。
その他
つづく。。。
参考資料 Saxpics-Buescher
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